異体字
いよいよゴールデンウイークの始まりだ。
そのゴールデンウイークにあわせて、春の「京都非公開文化財特別公開」がはじまった。
ふだんは公開されない文化財を特別に見せてくれるという催しで、今回は京都一円19箇所で行われるという。
そのひとつ、金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)の山門が公開され、お金を払えば上に登れ、京都の街が一望できるというので出かけてみた。
ウチから自転車で20分くらいの距離なのでゆるゆる走っていたら、目的地のずっと点前、清荒神(きよしこうじん)というお寺の前で写真を撮っている人がいた。

清荒神の門前で
その方は京都の南方にある枚方市(ひらかたし)から自転車で来たという。
聞けば、『ウチにぢっとしているとカミさんに叱られるので、外に出て三宅安兵衛遺志碑を巡ることにしている』 という。
この方は石碑を撮っておられたのだった。
石碑を指さして 『日本最初 清三寶・・・ の「最」がウガンムリになってるでしょ』 と私に説明してくれた。
へぇー どれどれ。 ↓
上の方で小さな字だから気づきにくい。
『これはパソコンで変換でけへん文字や』 とのこと。
んー、なるほど !! こんな字は見たことない。

日本最初 清三寶・・・
石碑の裏にまわって、『ここに「三宅安兵衛遺志」と彫ってあるでしょ。』
『こういう石碑が 京都市内や南の郊外に 400本ほど建ってます。』
ふむふむ、たしかに 「大正十五年十二月建之 三宅安兵衛遺志」 と彫られている。

「大正十五年十二月建之 三宅安兵衛遺志」と彫られている
その方は、400本ほどあるという三宅安兵衛の石碑のリストを手にしておられ、この石碑の幅や高さなどのサイズを巻尺で計り、「最」の字が違うことなどを鉛筆でそのリストに書き込んでおられた。
その方からいろいろ教えてもらったので礼を述べて別れ、それから金戒光明寺に着いた。
山門は小高い丘の上にあるので≪そびえている≫という感じだ。
楼上には大きな扁額がかかっている。 ↓

金戒光明寺山門は小高い丘の上にある
案内板に従って進む。

特別公開はこちら
立地がいいので、楼上からは京都の街が一望できる。
安置されている諸仏や天井画などの説明のあと、扁額について説明があった。 ↓
『このお寺は法然上人が悟りを開かれた場所に建てられ、浄土宗のお寺 です。
※ 法然は浄土宗の開祖とされる。
扁額には「浄土たぶん誤解され易いんだろう。
これを読めば 誰だって 浄土真宗 の寺院で最初に建てられた山門だと思ってしまう。
浄土宗のお寺に、浄土真宗という違う宗派の名前が書かれているのが気になる様子だった。
※ この扁額を書いたのは後小松天皇(室町時代)だそうだ。宗派の名前が間違ってても、「書き換えてもらえませんか」 とは言いにくかったのだろうか。

山門の楼上で説明を聞く
山門の階段を下りて外に出て扁額を見直した。

扁額には 「浄土真宗最初門」 とある
クローズアップはこちら。 ↓

「浄土真宗最初門」 のクローズアップ
さっきは気づかなかったが、「最初門」 の 「最」 が、こちらもウガンムリになっていた。
さっきの 清荒神門前の石碑と同じ じゃないか !!
ウチに帰ってインターネットで調べてみたら、グリフウィキ(GlyphWiki)という漢字字形のサイトがあって、「最」の異体字としてウガンムリの「最」が出ていた。( こちら )
異体字としてよく知られているのは 国 ・ 國 、沢 ・ 澤 などの旧字体だが、この程度のフォントはパソコンにも入っている。
しかしこのウガンムリの 「最」 はパソコンにもないマイナーな異体字のようだ。
「最初門」 の扁額よく見ると、このウガンムリの 「最」 は上の 「日」 を略した字体のようだ。
字体というよりも、装飾的に書いた文字のようだ。
だからパソコンのフォントには成りえず、グリフウィキのようなマニアックなサイトにしか見られないのだろう、と思った。
漢字の世界も複雑だ。
2018.4.28