京都で塩を焼く

2018.8.31

きょうの話は塩を焼くといっても買ってきた塩をコンロで焼く話ではありません。
むかしは塩を作るのにえらい苦労した。
わが国で塩を作る(採る)ときはまず、海の水をいろいろな方法で「かん水」という塩分の濃い水にして、それを火にかけて釜で煮詰めた。
その釜を「塩釜、塩竈」といい、その作業を「塩焼き」という。

京都には海がないから海の水はない。
しかし、平安時代、海から海の水を運んできて「塩焼き」をした、という話を聞いた。

しかも、塩を作る(採る)ためではなく、「塩焼き」の風情を楽しんだらしい。
「塩焼き」のどこが風流なのか全然理解できないし、そもそも海の水を運んでくるという(自動車もない平安時代に)とほうもない労力を使った(らしい)のにあきれた。

その話を詳しく調べてみたら、その人物は源融(みなもとのとおる)、場所は平安京の五条から六条あたりにあった源融の広い邸宅「河原院(かわらのいん)」の庭でのできごとだという。

その場所は図書館の近くにあるという。
きょう、借りた本を図書館に返しにいったついでに立ち寄ってみた。

河原院址
河原院(かわらのいん)址の石碑と駒札

なにしろ1000年も昔の話だし、その後京都は戦乱や大火で焼失し、街並みも大幅に改造されていまや何も残っていない。
でも、その記憶を残したいという気持ちから、石碑と駒札があった。

河原院跡
「坆付近源融河原院址」と読める

駒札には、この近くに「塩竈町(しおがまちょう)」「本塩竈町(もとしおがまちょう)」というところが残っていると書いてある。

河原院跡
駒札は「塩竈町」「本塩竈町」に言及している

で、探してみた。
「塩竈町」はなかなか見つからなかったが、やっと或るビルのプレートに「塩竈町」とあるのを見つけた。

塩竈町
或るビルのプレートに「塩竈町」とあった

「本塩竈町」の町名表示は簡単にみつかった。
駒札どおり、一応あるにはある。

本塩竈町
「本塩竈町」の町名表示

この辺りに塩竈(塩釜)があって、塩焼きの風情を楽しんだのだろうか。
町名はあっても、なにもない。

海の水はいまの兵庫県尼崎の海岸から毎月30石運んだと言われている。(一説には毎日30石)
1石=180リットル、10石=1.8トン、30石=5.4トン。
大した量だが、まぁその位なければ塩田をつくり塩焼きを楽しめなかっただろう。

話しは飛ぶが、いまから6年前、海の無い京都に水族館ができた。
3,000トンの水が使われ、そのうちの90%が海水だそうだ。(残りの10%は真水で淡水魚用)
海水 2,700 トンは海から運んでくるのかと思ったら、人工的に調整して「海水」を作っているという。
平安時代の源融(みなもとのとおる)が聞いたら目を回すか、そのやり方に理解できず 「あっ、そう」 で終わるかどちらかだろう。

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この辺りは鴨川のそばに当たる。
平安時代の白河天皇は自分の意に沿わぬものとして 「賀茂河の水、双六の賽、山法師」 を挙げている。(平家物語巻一)
当時、鴨川(賀茂河)は暴れ川でよく氾濫したらしい。

河原院の庭は持ち主がちゃんと管理している間はいいが、持ち主がいなくなると荒れ果て、やがて洪水で失われたらしい。
しかし、その庭の一部がいまも残っているという。
「渉成園(しょうせいえん)」

渉成園
渉成園

行ってみたらたしかに水たまりがあった。
いまは庭園として整備され、水たまりは「印月池」と名づけられ、蓮がいっぱい浮かんでいた。

渉成園
渉成園

松がなければ、モネのジベルニーの邸宅の池のようでもある。
都会のなかのオアシスだ。

さて最後に、渉成園からバス停3つ先にあるという 『塩竈神社』 にも立ち寄ってみた。
なんで、海も塩田もない京都にこんな神社があるのか ?

塩竈神社
京都にある塩竈神社

京都はナゾ深い土地ではある。

2018.8.31




【過去の関連記事】 見て歩る記 京都編(京都府も含む)
ただし、2015年以降、2014年以前はこちら

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