地元に恩返し

2020.2.29

けさの新聞に 「美人のすべて」 という題で、江戸時代から明治・大正、そして昭和までの美人画コレクションの展覧会が開かれている、との記事を見つけた。
『(京都画壇美人画の名手)上村松園の作品17点が並ぶ』 という。
中には、最初の師・鈴木松年との珍しい合作「加賀千代図」があり、『師が松を、本人は 「朝顔につるべ取られてもらひ水」 で知られる女性俳人を描いていて、絵を習い始めたころのうら若い(松園の)筆遣いが感じられる』 と書いてある。

新聞
© 京都新聞 2020.2.29 朝刊 p.9 美術面 から

へぇー、先日お墓を訪ねたり、雲龍図を見たりした鈴木松年かぁー ( お墓は こちら )( 雲龍図は こちら

新聞記事では 「3月1日まで」 とある。
3月1日とはあしたである。
なんでこんな切羽詰まったタイミングで記事を載せたんだろうと不思議に思った。(理由については下記)
でもあしたまでだそうだから、雨模様だったが行ってみようかな、という気になって出かけた。

場所は嵐山。
名前は福田美術館。
聞いたことない名前の美術館だ。

福田美術館

福田美術館

雨というのに結構盛況だ。
新聞記事が取りあげていた 「加賀千代図」 もあった。

展示室

「牡丹雪」 という題だが雪片はひとつだけ(鏑木清方)、「さくら狩・紅葉」 という題だが桜の花びらはほんの数片が舞い落ち、紅葉した葉が地面にひとつ(池田蕉園・池田輝方)。
さらに 「雨を聴く」 という題だが雨は描いてない(上村松園)、「美人観月」 という題ながら月を描いてない(上村松園)。
ほんとに こころ憎い なー、日本画は。

着物姿の女性図ばかり60点。
随分と目の保養になって、大満足。
すべてこの美術館の所蔵品だという。
『私設』 美術館なのにすごい

福田ってどんな人だ ?
聞けば、その人は福田吉孝氏。京都市出身で京都市で創業した消費者金融 「アイフル」 の創業社長だそうだ。
福田氏は17年ほど前、「何か社会に還元できないか」 と思っていたとき、嵐山の土地売買の話があり、また絵画120点ほど買わないかという話も偶然重なり、以来15年にわたり絵画を収集されたそうな。

地元に恩返し したい」 として、四季折々に美しい姿を見せる嵐山の景色と渡月橋を一望できる抜群の立地に、「美しい自然と日本美術の融和」 をコンセプトに 去年10月にオープンしたばかりだという。
そうだったのか。

消費者金融はとかく悪評高いが、社会に必要でもある。
罪滅ぼしではないと思うが、こういう 「 地元に恩返し」 は見上げたものだ。

しかも、美術館の音声ガイドはふつうは有料だが、ここは無料。
驚くべきことに 「撮影OK」 !
「SNSにどんどんアップしてください」 と。
そうなんだ、かつて建仁寺が 「撮影OK」 だと知ったとき、私は
撮って帰った写真を人に見せたらいい宣伝になる。
ほとんどの人はどうせ商業的に使えるようないい写真は撮れていないのだ。
と書いたことがあった。( こちら、2018.12.9
わが意を得たり。 美術館の方針に敬意を表したい。

福田美術館

なお、新聞記事に 「3月1日まで」(あしたまで) と書いてあった。
通常、そんな切羽詰まった紹介記事はありえない。
記事を見て、不思議に思った。 (上述)

美術館にきてその理由がわかった。
「美人のすべて」 展は3月8日までの予定で開催されていたが、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として、急遽 3月2日以降は臨時休館することになったのだという。

いい展示なのに、休館を余儀なくされるとはかわいそうだ。

2020.2.29





【過去の関連記事】 私設美術館
郷さくら美術館 (2014.1.30) 東京都目黒区上目黒
細見美術館 (2018.9.9) 京都市左京区岡崎
福田美術館 (2020.2.29) 京都市右京区嵯峨





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