熱はとれてます
きょう、所用でビジネス街のある四条に行ったついでに百貨店の地下にある食品売り場に寄った。
いわゆる 『デパ地下』 だ。

家内が好きな和菓子を買って歩いていたら、かまぼこ屋さんにおいしそうなかまぼこが並んでいた。
(註: ここでいうかまぼこは、板についたかまぼこ(板蒲鉾)ではなく、魚のすり身を油で揚げた、つまり天ぷらにしたもの)

揚げたてだと熱いだろうから、和菓子と一緒に持って帰るので、店員さんに 「冷たいですか」 と聞いた。
すると 「もう熱はとれてます」 との答え。
わっ、こんな表現があるんだ。感激した。
「さめてますか」 と聞けばよかったのに、無粋にも 「冷たいですか」 と言ったのがマズかった。
「熱がとれている」 とはなんとうまい表現か。
「冷たい」「冷えてる」「さめてる」 など、食品の低い温度を表現するにも、日本語は語彙が豊富だ。
しかし、よく考えると 「冷たい」「冷えてる」「さめてる」 などは、食品に対する愛情や敬意が欠けているように感じられる。
その点 「熱がとれている」 とは 食品に対するすばらしい表現だ。
ま、料理用語に 『粗熱(あらねつ)をとる』 という表現があるので 「熱がとれている」 はそこから来たのかもわからない。
しかし、相手(食品)に敬意を表し 「さめてる」 などとは言わない店員さんの言葉遣いにも感心した。
豊かな語彙の中に暮らす日本人 ― かまぼこを買って、バスの中ではそんなことを考えながら帰った。
余談だが、『デパ地下』 はおどけた感じがしてあんまりいい日本語じゃないな。
2021.8.17